単語帳は1冊やり込んだ。長文もそれなりに読んでいる。それなのに、模試の英語が伸びない——。こういう相談を、私はこれまで数え切れないほど受けてきました。
原因の多くは、勉強量ではありません。学習の順序です。英語は「文法 → 英文解釈 → 英作文」の順で積み上げると、遠回りに見えて、結果的に最短で伸びます。
この記事では、指導歴9年・のべ1,500人以上を教えてきた経験から、なぜこの順序が合理的なのか、順序を飛ばすとどこで止まるのか、そして今のあなたがどこから始めればよいのかを、具体的にお話しします。
まず診断——あなたの「伸びない」はどのタイプか
次のチェックリストを見てください。当てはまるものはありますか。
- 単語は覚えたのに、長文になると意味がつながらない
- 文法問題は解けるのに、和訳させられると日本語にならない
- 読めた気はするのに、設問の根拠を英文の中から示せない
- 英作文になると、何から書けばいいのか手が止まる
- 勉強時間のわりに、模試の点数が動かない
実は、これらの悩みの正体はバラバラではありません。ほとんどが同じ一つの原因から来ています。「文法 → 解釈 → 英作文」という順序のどこかを飛ばしている、あるいは順序が入れ替わっているのです。
上の2つに当てはまる人は「文法と読解がつながっていない」タイプ。3つ目は「なんとなく読み」タイプ。4つ目は「書く練習の土台ができていない」タイプです。5つ目の「時間のわりに点数が動かない」は、どのタイプにも共通して現れるサインです。どのタイプも、処方箋はこの後の順序の話に集約されます。
結論——「文法 → 解釈 → 英作文」の順で学ぶ
先に結論を言います。大学受験の英語は、次の3段階をこの順番で積み上げてください。
① 英文法——「なぜその形になるのか」を理解する
② 英文解釈——文法を使って、1文を正確に読む
③ 英作文——自分で英文を組み立てて、知識を定着させる
① 文法は「暗記」ではなく「理由の理解」
文法と聞くと、4択問題のための暗記科目だと思う人が多いのですが、それは文法の一面にすぎません。文法の本当の役割は、英文が「なぜその形になっているのか」を説明してくれる地図であることです。
たとえば、英文はどんなに長くても S・V・O・C・M という要素の組み合わせでできています。この骨組みが見えるかどうかで、長文の読みやすさはまったく変わります。地図を持たずに長文の森へ入るから、「なんとなく読み」になるのです。
② 解釈は「文法を読解に接続する」練習
文法を一通り学んでも、それだけでは長文は読めるようになりません。知識として知っていることと、実際の英文の中でそれを見抜けることは、別の技能だからです。
その橋渡しをするのが英文解釈です。1文を取り出して、主語と動詞はどれか、修飾語はどこからどこまでか、と構造を確定させながら読む練習をします。ここを通ると、文法の知識が初めて「読む力」に変換されます。
③ 英作文は「使うことで完成する」最終段階
そして仕上げが英作文です。読んで分かることと、自分で正しく書けることの間には、もう一段の差があります。書こうとすると、時制・冠詞・語法など、理解の曖昧な部分が全部あぶり出されるからです。
逆に言えば、英作文は文法と解釈の理解度を測る最高のテストです。書けるようになった知識は、読解でも揺らぎません。だから英作文は、単なる1分野ではなく、英語全体を定着させる総仕上げの位置にあります。
文法で「形の理由」を理解し、解釈で「読む」に変換し、英作文で「使える」まで持っていく。当サイトが掲げている「文法 → 解釈 → 英作文の順で、英語を一本につなげる」とは、この流れのことです。3つの分野は別々の科目ではなく、一本の線でつながっています。
順序を飛ばすと、どこで止まるのか
「順序どおりが合理的」と言われても、実感が湧かないかもしれません。そこで、順序を飛ばした場合に実際に起きる停滞パターンを3つ紹介します。私が教室で毎年見てきた、本当によくあるケースです。
パターン1:文法を飛ばして長文を多読する
「英語は慣れだ」と長文をひたすら読むタイプです。単語力があるので、最初はある程度読めてしまいます。しかし、知っている単語を拾って意味を推測する読み方のため、構造が複雑な英文になった瞬間に精度が崩れます。
たとえば、主語が長い文や倒置を含む文で、どれが主語でどれが動詞か分からなくなる。設問で「下線部を和訳せよ」と言われると手も足も出ない。このタイプは、あるレベルまでは伸びて、そこからぴたりと止まるのが特徴です。伸び悩んでから文法に戻る人が多いのですが、それなら最初から順序どおりにやったほうが早かった、ということになります。
パターン2:文法問題は解けるのに、解釈をやらない
文法の問題集を何周もして、4択なら正解できる。それなのに長文が読めないタイプです。原因ははっきりしています。文法を「問題を解くための知識」として覚え、「英文を読むための道具」として使う練習をしていないからです。
4択問題は空所の前後だけ見れば解けることも多いのですが、長文では自分で文構造を判断しなければなりません。この橋渡しの練習が英文解釈です。ここを飛ばすと、文法の勉強がいつまでも読解の点数に反映されません。
パターン3:例文暗記だけで英作文に挑む
文法・解釈の土台がないまま、例文の暗記だけで英作文に入るタイプです。覚えた例文とそっくりの問題なら書けますが、少しひねられると対応できません。「なぜその形になるのか」が分かっていないので、応用が利かないのです。
また、自分の書いた英文のどこが間違っているかを自分で判断できないため、勉強が「模範解答の書き写し」になりがちです。文法と解釈の土台があれば、自分の答案を自分で点検できるようになります。
段階別の処方箋——今のあなたはどこから始めるか
では、具体的にどこから手をつけるか。先ほどの診断結果に合わせて、当サイトの記事群から入口を示します。当サイトの3カテゴリと毎日クイズは、まさにこの「文法 → 解釈 → 英作文」の順序で設計されています。
段階1:文法——「なぜその形か」から始める
文法に不安がある人、長文で構造が取れない人は、ここからです。おすすめの入口は次の2本です。
この2本のあと、時制の全体像のように分野ごとの「全体像」記事から各章へ進んでください。英文法カテゴリには、品詞から特殊構文まで一通りの記事を揃えています。どの記事も「なぜその形になるのか」の理由から説明しているので、暗記に頼らず読み進められます。
段階2:英文解釈——1文を正確に読む練習へ
文法を一通り学んだら、英文解釈に進みます。最初に読んでほしいのは次の2本です。
- 英文解釈の全体像——解釈という勉強が何をするものか、最初にここで掴んでください
- 主語と動詞の見つけ方——すべての英文読解はここから始まります
続けて修飾語を外して骨格を取るへ進むと、長い英文が急に短く見えるようになります。英文解釈カテゴリでは、句と節・関係詞・倒置・省略など、入試英文で出会う構造を1つずつ練習できます。
段階3:英作文——書いて定着させる
解釈で英文の構造が見えるようになったら、英作文で仕上げます。おすすめの入口は次の2本です。
- 和文和訳の技術——「訳せない日本語は、訳せる日本語に言い換えてから英語にする」という、和文英訳の考え方の根本です
- 日本人がやりがちな英作文ミス総点検——冠詞・単複・時制など、減点されやすいポイントを先に知っておけます
英作文カテゴリでは、「〜すればするほど」「〜がなければ」のような入試頻出の表現パターンを1記事1テーマで練習できます。
並行して:単語・熟語は毎日コツコツ
ここまで読んで、「単語はいつやるのか」と思った人もいるはずです。単語と熟語は、この順序の外側で毎日並行してください。語彙は文法のように順序で積み上げるものではなく、毎日の反復で増やすものだからです。
当サイトの毎日クイズ(毎日英文法・初級編ほか、英単語・英熟語×3レベル)は、1回3分で解ける分量にしてあります。文法の知識確認と語彙の反復を、同じ習慣の中で回せる設計です。
学習ロードマップ——時期の目安
時期別の目安を表にまとめます。あくまで一般的な目安であり、現在の学力によって前後します。大切なのは時期そのものより、段階を飛ばさないことです。
| 時期 | 中心にする学習 |
|---|---|
| 高2まで | 文法の理解+単語の習慣化。品詞と5文型から始めて、文法を一通り終える |
| 高3 春〜夏 | 英文解釈。1文を正確に読む練習に集中する。文法は弱い分野を戻って補強 |
| 高3 夏〜秋 | 解釈の完成+英作文の開始。長文演習も本格化させる |
| 高3 秋〜直前期 | 過去問演習+英作文の仕上げ。解釈・文法は間違えた箇所だけ戻る |
高3から始める場合も、順序は同じです。文法と解釈を圧縮して進めることになりますが、飛ばすのではなく「速く通る」のがポイントです。
よくある質問
Q1. 文法を完璧にしてから解釈に進むべきですか?
いいえ、完璧は待たなくて大丈夫です。文法を「一通り」終えたら解釈に進み、解釈の中で分からない構造が出てきたら文法に戻る——この行き来こそが、文法を定着させる一番の近道です。文法の完成を待っていると、いつまでも先へ進めません。
Q2. 学校で長文の宿題が出ます。解釈が終わるまで長文はやらないほうがいいですか?
いいえ、宿題の長文は並行して構いません。ただし、それとは別に「1文を正確に読む」精読の時間を確保してください。長文をこなす量と、読みの精度を上げる練習は、役割が違います。量だけでは精度は上がりません。
Q3. 志望校に英作文がない場合、③は不要ですか?
配点比重は下がりますが、ゼロにはしないことをおすすめします。英作文は「書くための勉強」であると同時に、文法・語法の理解を確認する手段でもあるからです。志望校の出題形式は年度により変わることもあるため、必ず最新の募集要項・過去問で確認してください。
まとめ——遠回りに見える順序が、一番の近道
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 英語が伸びない原因の多くは、量ではなく順序にある
- 「文法 → 解釈 → 英作文」の順で学ぶ。文法で理由を理解し、解釈で読む力に変換し、英作文で定着させる
- 順序を飛ばすと、「なんとなく読みの頭打ち」「文法が読解につながらない」「応用の利かない英作文」のいずれかで停滞する
- 単語・熟語だけは順序の外側で、毎日並行して積み重ねる
文法に時間をかけるのは、一見遠回りです。しかし、土台のない速読も、土台のない例文暗記も、必ずどこかで止まります。9年間教えてきて、着実に伸びた生徒に共通していたのは、この順序を守ったことでした。
当サイトの記事は、すべてこの順序で並べてあります。今日の自分の段階に合った1本から、始めてみてください。
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