「定期テストはなんとかなるのに、模試になると英語が壊滅する」。高2の生徒から、いちばんよく聞く悩みです。テスト範囲の単語と本文を覚えれば点が取れる定期テストと違って、模試は初めて見る英文を自力で読まされます。ここで点が取れないのは、サボっていたからではありません。「初めての英文を読む力」を作る勉強を、まだ始めていないだけです。
私は予備校で9年間、のべ1,500人以上の高校生に英語を教えてきました。この記事では、その経験から「高2からの英語やり直し」を、正しい順序と時期別のロードマップにまとめます。高3の春に読んでいる方向けの圧縮プランも用意しました。
まずは原因の診断から|あなたはどのタイプ?
やり直しで最初にやるべきことは、参考書選びではありません。「なぜ模試で読めないのか」の特定です。次のチェックリストで、当てはまるものを数えてください。
模試で読めない原因チェック
- 英文を訳すとき、知っている単語をつなげて「なんとなく」意味を作っている
- 1文が3行を超えると、どこからどこまでがまとまりか分からなくなる
- 文法問題は解けるのに、その文法が長文の中に出てくると気づけない
- 単語帳は何周かしたが、英文を読む速さは変わっていない
- 「主語と動詞はどれ?」と聞かれると、自信を持って指させない
3つ以上当てはまった方は、語彙力ではなく「文の構造をつかむ力」が足りていないタイプです。実は、模試で伸び悩む高2生の大半がこのタイプです。定期テストは範囲の英文を事前に読み込めるので、構造がつかめなくても記憶で補えます。模試ではその補助輪が外れるため、実力差がそのまま点数に出るのです。このタイプの方は、単語を覚え直しても解決しません。処方箋は次の章で説明します。
当てはまりが2つ以下だった方は、構造のつまずきがまだ浅い段階です。進む順序は同じですが、後で紹介する毎日クイズの比重を上げて、まず「毎日英語に触れる状態」を作ることから始めてください。
原因別の処方箋|何を、どの順序でやり直すか
英語のやり直しには、合理的な順序があります。結論から言うと、「文法の基礎 → 1文の解釈 → 英作文で出力」の3段階です。読む力を作る材料が文法、材料を使って読む練習が解釈、定着させる仕上げが英作文、という関係になっています。
第1段階: 文法を「ルール暗記」から「文の設計図」に戻す
やり直しの起点は文法です。ただし、4択問題を解くための文法ではありません。英文の骨格を見抜くための文法です。
最優先は文型です。英語の文は、どんなに長くても S・V・O・C と修飾語 M の組み合わせでできています。まずS・V・O・C・M とは何かを確認し、5文型の見分け方まで通してください。ここが固まると、長い英文が「骨格+飾り」に分解して見えるようになります。
文型とあわせて、自動詞と他動詞の違いも早い段階で押さえておきましょう。動詞の後ろに目的語が来るかどうかを予測しながら読めるようになり、1文の見通しがよくなります。
文型の次は時制です。時制の全体像から入ると、現在完了や過去完了を個別に暗記するのではなく、地図の中で位置づけて理解できます。その後に助動詞・不定詞・動名詞・分詞・関係詞・仮定法と進めば、読解に必要な文法の幹は揃います。1単元ずつ「なぜその形になるのか」を自分の言葉で説明できる状態を目指してください。説明できれば理解、できなければ暗記止まり、というのが分かりやすい判定基準です。
第2段階: 1文を正確に読む「英文解釈」
文法の基礎が入ったら、次は1文を正確に読む練習です。長文ではなく、まず1文です。ここを飛ばして長文に進むと、「なんとなく読み」のまま量だけこなすことになります。
最初にやることは2つです。1つ目は主語と動詞を見つけること。2つ目は修飾語を外して骨格を取ることです。この2つの技術だけで、読める英文の長さが目に見えて変わります。そこから長い主語の見抜き方など、入試英文でつまずきやすい形へ広げてください。全体の見取り図は英文解釈の全体像にまとめています。
練習のやり方はシンプルです。1日1〜2文でかまいません。まず自力で和訳を紙に書く。次に、主語・動詞・修飾語がどれだったかを確認する。訳がずれていたら、単語ではなく構造のどこを読み違えたかを特定する。この15分の往復を毎日続けることが、長文読解のいちばんの近道です。量より、1文ごとの精度を優先してください。
第3段階: 英作文で「出力」して仕上げる
意外に思われるかもしれませんが、やり直しの仕上げは英作文です。読むだけの知識は曖昧なまま残りますが、自分で文を組み立てようとすると、理解の穴が正確にあぶり出されます。時制・冠詞・語法など、日本人がやりがちなミスを一度点検しておくと、文法の理解が「使える知識」に変わります。国公立を視野に入れる方は、訳しにくい日本語を言い換えてから英語にする技術まで身につけておくと、高3で大きな武器になります。
並行してやること: 毎日クイズで語彙と文法を習慣化
単語と熟語は、上の3段階と並行して毎日少しずつ積み上げます。まとまった時間はいりません。当サイトの毎日クイズは、英文法・英単語・英熟語を各3レベル・1回3分で確認できる形にしてあります(まずは毎日英文法の初級編から。単語・熟語も初級カテゴリがあります)。「毎晩寝る前に1回」のように生活に固定して、やり直しの習慣の起点にしてください。習慣が先、量は後です。
クイズを初級からにしているのには理由があります。やり直し期にいちばん大事なのは「解ける体験を毎日積むこと」だからです。背伸びして難しい問題に当たると、3日で止まります。初級が安定して満点近く取れるようになってから、中級・上級へ上げていけば十分です。
時期別ロードマップ|高2夏から高3夏まで
3段階を時期に落とすと、次の表のようになります。高2の夏に始める場合の標準プランです。
| 時期 | 中心にやること | 毎日クイズ |
|---|---|---|
| 高2 夏〜秋 | 文法の幹(文型・時制・助動詞・準動詞)を単元ごとに理解し直す | 初級を毎日1回 |
| 高2 冬 | 文法の残り(関係詞・比較・仮定法)+ 1文解釈の入門(主語と動詞の特定) | 初級を継続 |
| 高3 春 | 英文解釈を本格化。1文を構造から訳す練習を毎日1〜2文 | 中級へ |
| 高3 夏 | 英作文で出力練習+志望校の過去問に初めて触れ、距離を測る | 中級〜上級 |
勉強時間の目安は、高2のうちは平日30〜60分で十分です。部活と両立できる量に抑えて、そのかわり止めないことを最優先にしてください。土日にまとめて3時間やって平日ゼロ、より、毎日30分のほうが確実に伸びます。高3に入ったら、英語には1日60〜90分を確保したいところです。
もう1つのポイントは、高2のうちは模試の偏差値を追わないことです。文法と解釈の基礎は、成果が模試に現れるまで2〜3か月遅れます。高2の冬から高3の春にかけて読める文が増え、高3夏の模試で数字に出る、というのが典型的な伸び方です。数字が動かない時期に不安になってやり方を変えてしまうのが、いちばんもったいないパターンです。
高3の春から始める圧縮プラン
高3春スタートの場合も、順序は変えません。文法の幹を4〜6週間で一気に通し、ゴールデンウィーク明けから解釈、夏から英作文と過去問、という圧縮になります。「時間がないから長文から」は遠回りです。読めない原因を残したまま長文を読んでも、読めるようにはならないからです。
やり直しでつまずく3つのパターン
順序と同じくらい大事なのが、「やってはいけない勉強」を知っておくことです。9年間で何度も見てきた挫折パターンを3つ挙げます。
パターン1: 単語帳だけを回し続ける
いちばん多い失敗です。単語帳は達成感が出やすいので、勉強した気になれます。しかし構造が取れない人は、単語を全部知っている文でも訳せません。単語は毎日の習慣として続けつつ、勉強時間の中心は文法と解釈に置いてください。
パターン2: 長文の多読に逃げる
「英語は慣れだ」と言われて長文を読み続けるパターンです。1文を正確に読める人が量を読むと速くなりますが、読めない人が量を読んでも「なんとなく読み」が固定されるだけです。多読は解釈の後、が鉄則です。
パターン3: 文法の4択問題集から始める
問題集を1冊解き切ったのに長文が読めない、という相談もよく受けます。4択の正解を選ぶ練習と、文の構造を見抜く練習は別物だからです。まず単元ごとの理解(なぜその形になるのか)を作り、問題演習は理解の確認として使ってください。
よくある質問
Q1. 高3の春からでも間に合いますか?
順序を守れば、十分に立て直せます。英語は積み上げ科目なので、逆に言えば正しい順序で積めば着実に伸びる科目です。ただし夏以降のスタートは、志望校との距離次第で戦略が変わります。独学で判断が難しい場合は、一度プロに学習計画を見てもらうことをおすすめします。
Q2. 単語帳は何を使えばいいですか?
学校で配られているものがあれば、それで十分です。やり直し期に大事なのは銘柄ではなく、「毎日触れること」と「1周を速く回すこと」です。銘柄を乗り換えるより、今持っている1冊を仕上げてください。1周に3か月かけるより、7割の完成度で何周も回すほうが、結果として速く定着します。
Q3. 学校の授業や定期テストとは、どう両立すればいいですか?
やり直しの内容と学校の勉強を、別物にしないことです。定期テストの範囲に出てくる英文こそ、文型と主語・動詞の特定を練習する教材にしてください。授業の予習で1文ずつ構造を取るようにすれば、テスト勉強がそのまま入試対策になります。テスト前の1週間はテスト範囲に集中してかまいません。毎日クイズだけは止めずに続けてください。
Q4. 塾や予備校には行くべきですか?
この記事の順序は独学でも実行できますし、当サイトの記事はそのために書いています。一方で、「自分の読み方のどこが間違っているか」は、自分では気づきにくいのも事実です。演習を見てもらえる環境があると、修正のスピードは上がります。
まとめ|高2からのやり直しは、順序がすべて
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 模試で読めない主因は語彙不足ではなく、文の構造をつかむ力の不足
- やり直しの順序は「文法の基礎 → 1文の解釈 → 英作文で出力」
- 高2夏スタートなら、文法は高2のうちに、解釈は高3春に、出力は高3夏に
- 単語帳だけ・長文多読・4択問題集スタートは、遠回りになりやすい
- 語彙と文法の維持は毎日クイズで習慣化し、勉強時間の中心は構造の理解に使う
高2の今の模試の点数は、まだ実力の完成度を測るものではありません。合否を左右するのは、ここから正しい順序で積み上げられるかどうかです。合否を分けるのは、ここから1年間、正しい順序で積めるかどうかです。やり直しは、始めたその日から前に進みます。まずは今夜、毎日クイズの初級を1回解くところから始めてみてください。
